田舎に住もうと思える作品10選|地方で暮らす人生を考える

若いころは、都会に憧れていました。
仕事も遊びも選択肢が多く、電車に乗ればどこへでも行ける。
新しい店も、人も、情報も、地方とは比べものにならないほど身近にある。
だから、地方を出て東京へ行くことは、人生を広げることだと思っていたのかもしれません。
ところが、年齢を重ねると少しずつ欲しいものが変わってきます。
静かな場所で暮らしたい。
家族と過ごす時間を増やしたい。
子どもには自然の中で育ってほしい。
仕事だけではない時間を持ちたい。
実際、地方から東京に憧れて出てきた人が、子どもが生まれると「子どもは地方で育てたい」と考えることがあります。
若いころに自分が欲しかったものと、大人になって家族に与えたいものは、同じではないのかもしれません。
都会が嫌いになったのではなく、大切にしたいものが変わったのです。
この記事では単に田舎を美しく描いた作品ではなく、「地方で暮らす人生も悪くない」と思わせてくれる10作品を紹介します。
01 都会暮らしで失ったもの

若いころは、都会にないものが見えなかった
都会には、たくさんのものがあります。
仕事を選べる。
好きな店へ行ける。
趣味の仲間も見つけやすい。
新しい情報もすぐに入ってくる。
若いころなら、それだけで十分に魅力的です。
地方から東京へ出てきた人にとって、駅前に何でもあることや、夜遅くまで街が動いていることは、それだけで自由の象徴に見えるでしょう。
私自身も、若いころなら「便利な場所に住むこと」を豊かさの一つとして考えたと思います。
でも、仕事をして、家庭を持ち、年齢を重ねると、便利さだけでは測れないものが見えてきます。
通勤に使う時間。
人の多さ。
住宅費。
子どもが過ごす環境。
家族と一緒に食卓を囲める時間。
都会に住んでいるからこそ、見えなくなっていたものもあるのではないでしょうか。
子どもが生まれると、住みたい場所が変わる
若いころは、地方を出たいと思っていた人がいます。
ところが、自分が親になると、「子どもには自然の中で育ってほしい」と思うようになる。
自分が若いころに欲しかったものではなく、自分の子どもに残したいものを考えるようになるからです。
もちろん、地方で子育てをすればすべてが良くなるわけではありません。
学校、病院、交通、仕事、人間関係。
地域によっては、都会より不便なこともあります。
それでも、朝起きたときに山が見えること。
子どもが土や水に触れられること。
そこに住む人の心の温かさ。
そうしたものに価値を感じるようになるのは、決して不思議ではありません。
都会が悪いのではない。ただ、欲しいものが変わった
大人になって地方暮らしが気になり始めたからといって、都会が間違っていたわけではありません。
若いころには都会が必要だった。
そして今は、別のものが必要になった。
ただ、それだけなのかもしれません。
住む場所を選ぶことは、人生で何を大切にするのかを選ぶことでもあります。
だから、このテーマで紹介したいのは「田舎は最高」という作品ではありません。
地方にも不便なことがある。
人間関係に悩むこともある。
仕事の問題もある。
それでも、その土地で暮らす人たちは、なぜそこにいるのか。
そこを見ると、都会で暮らしている私たちにも、少し違った人生の選択肢が見えてきます。
▼ポイント
- 都会が嫌いになったのではなく、価値観が変わった
- 大人になるほど「便利さ」以外も気になる
- 地方暮らしは人生の選択肢の一つにすぎない
02 昔の田舎暮らしと、今の地方暮らしは違う

仕事を変えずに地方へ移るという選択肢
昔の地方移住というと、会社を辞めて、仕事も生活も一から作り直すイメージがありました。
しかし現在は、テレワークを利用して、転職せずに地方へ移住する選択肢もあります。
内閣府の地方創生関連サイトでも、テレワークによって働く場所の制約が減り、「転職なき移住」が選択肢になると紹介されています。子育てや介護との両立も、テレワークのメリットとして挙げられています。
もちろん、すべての仕事が地方からできるわけではありません。
それでも、「地方に住むなら、今の仕事を捨てなければならない」という時代ではなくなりつつあります。
「田舎はいい」だけでは、暮らす場所を決められない
映画の中では、田園風景がとても美しく見えます。
しかし、実際に暮らせば、買い物も病院も交通も必要です。
地域の人との付き合いが負担になることもあるでしょう。
だから本記事では、田舎の風景だけを切り取った作品はできるだけ避けました。
見るべきなのは風景ではなく、その場所で人がどう生きているか。
そんな視点で選んだ素敵な10作品です。
03 田舎に住もうと思える邦画・日本のドラマ5選
1.『サンセット・サンライズ』

都会の仕事を持ったまま地方で暮らす。
今回のテーマなら、まずこの作品をおすすめしたいです。
『サンセット・サンライズ』は、リモートワークをきっかけに、東京の大企業で働く晋作が三陸へ「お試し移住」する物語。
4LDK・家賃6万円という住まいに惹かれ、海の近くで釣りを楽しみながら働く生活を始めます。
ところが、地方へ行けばすべてが自由になるわけではありません。
東京から来た「よそ者」として地域の人々との距離感に戸惑い、地方ならではの人間関係にも向き合うことになります。
この作品がいいのは、「地方に住めば幸せ」という単純な話ではないことです。
仕事は続けられる。
家賃は下がる。
自然は近い。
でも、人間関係は都会とは違う。
まさに、今の地方暮らしを考えるうえで見ておきたい作品です。
「移住=人生を全部変えること」と考えている人ほど、一度見てほしい作品です。
2.『リトル・フォレスト』

都会で失った、生きる力を取り戻す。
都会へ出たものの、自分の居場所を見つけられず、故郷の小さな集落へ戻ってきた、いち子。
そこで彼女は、畑で作物を育て、山の恵みをいただき、季節に合わせて料理を作りながら暮らします。
松竹による作品紹介でも、都会で失った自信や生きる力を、故郷での自給自足に近い生活を通して取り戻していく作品とされています。
この映画を見ていると、食べることが急に具体的になります。
スーパーへ行けば何でも買える生活ではなく、
「これはどこから来たのだろう」
というところまで戻っていく。
都会では効率を求めていた時間が、地方では料理や畑にゆっくり使われる。
何かを手に入れる話ではなく、余計なものを減らすことで自分を取り戻す話です。
田舎に住みたいというより、「もう少し丁寧に暮らしたい」と感じている人に向いています。
3.『おもひでぽろぽろ』

大人になってから故郷を見る。
27歳のOL、タエ子は山形へ一人旅に出ます。
そこで子どものころの記憶が次々によみがえり、田舎の自然やそこで暮らす人々との触れ合いを通して、自分自身を見つめ直していきます。
この作品は、いわゆる「移住映画」ではありません。
だからこそ、今回の記事に入れたい作品です。
大人になると、故郷の見え方が変わることがあります。
子どものころには何もなかった場所が、大人になって帰ってみると、妙に落ち着く。
昔は退屈だった風景が、今では贅沢に見える。
地方に住みたいと思う気持ちは、故郷へ戻りたいという気持ちと重なることがあります。
都会へ出た経験がある人ほど、タエ子の視点が刺さるかもしれません。
4.『イジューは岐阜と』

地方移住の「理想と現実」を知る。
地方移住を考えるなら、むしろこういう作品を見ておきたい。
『イジューは岐阜と』は、岐阜県の4つの街を舞台にしたロードムービー風のドラマです。
特徴的なのは、地方の素敵な面だけではなく、苦しい面も含めて移住の本質を描こうとしていること。
実際の移住者や役所職員も多数登場し、移住に興味のない主人公の客観的な視点から、地方の現実を見せていきます。
前作の『岐阜にイジュー!』でも、移住者の理想と現実、子育てや地域との付き合いなどが描かれています。
田舎暮らしを夢見るなら、良いところだけを見ないことも大切です。
不便さまで含めて、それでも住みたいと思えるか。
その判断材料になる作品です。
5.『自転車屋さんの高橋くん』

地方で暮らす30歳のリアル。
地方移住をテーマにした作品ではありません。
それでも、30代以上の読者には紹介したいドラマです。
主人公の朋子は東京出身の30歳。
岐阜で一人暮らしをしながら会社勤めをしています。
職場では悩みを抱えていますが、岐阜で暮らす中で、自転車屋を営む高橋と出会い、少しずつ人とのつながりを取り戻していきます。
この作品の魅力は、「田舎へ移住して人生が変わる」という大げさな物語ではないことです。
地方で働いて、近所の店へ行き、知り合いができる。
そんな普通の生活の中にある豊かさが描かれています。
都会から地方へ移ることを考えるとき、人生を劇的に変える必要はありません。
もしかすると、こういう小さな変化の積み重ねこそが、暮らしを変えるということなのかもしれません。
04 田舎に住もうと思える洋画・海外作品3選
6.『トスカーナの休日』

住む場所を変えると、自分も変わる。
離婚によって生活の基盤を失った作家フランシスは、友人から贈られたイタリア旅行でトスカーナを訪れます。
そして、丘の上にある古い家に惹かれ、その家を購入。
修復を続けるうちに、土地の人々と出会い、少しずつ新しい生活を作っていきます。
もちろん、日本の地方移住とは条件が違います。
それでも、この作品が教えてくれることは普遍的です。
人生がうまくいかなくなったとき、人は「何を取り戻すか」ばかり考えがちです。
でも、ときには住む場所を変えることで、これまでとは違う自分になっていくこともある。
田舎暮らしを考えている人だけでなく、人生を少しやり直したい人にもおすすめです。
7.『ノマドランド』

定住しない人生も、人生である。
『ノマドランド』は、一般的な意味での田舎暮らし映画ではありません。
家を失ったファーンが、車上生活を送りながらアメリカ各地を移動していく物語です。
だからこそ、この作品を入れたいと思いました。
私たちは「どこに住むか」を考えるとき、自然に、
家を買う。
会社へ通う。
同じ場所に住み続ける。
という前提で考えます。
しかし、ファーンの生き方を見ていると、住む場所を固定すること自体が当たり前なのだろうかと考えさせられます。
ディズニー公式でも本作はサーチライト・ピクチャーズの作品として紹介され、第93回アカデミー賞で作品賞、監督賞、主演女優賞の主要3部門を受賞しています。
地方に移住することだけが答えではありません。
二拠点生活でもいい。
季節ごとに場所を変えてもいい。
大切なのは、自分に合った暮らし方を選べることなのかもしれません。
『トスカーナの休日』とは違う、もう一つの豊かさを描く作品

海外作品をもう一本選ぶなら、田舎を「逃げ場所」として描く作品より、自然と共生する暮らしそのものを考えさせる作品を選びたいところです。
そこでおすすめしたいのが『ビッグ・リトル・ファーム 理想の暮らしの作り方』です。
ロサンゼルスのアパートを離れた夫婦が、200エーカーもの荒れた農地へ移り住み、自然の循環を学びながら農場を作っていきます。8年間の奮闘を追ったドキュメンタリーです。
ここで描かれるのは、都会から逃げて楽になる生活ではありません。
むしろ、農場では問題が次々に起きます。
それでも、自然を支配するのではなく、観察し、共存することで少しずつ暮らしを作っていく。
便利さを減らすことが、豊かさを減らすとは限らない。
そんな視点を与えてくれる作品です。
05 実際の地方暮らしを知るドキュメンタリー2選
8.『人生フルーツ』

豊かさは、時間をかけて育てられる。
今回の記事を30代以上の読者に届けるなら、この作品は外せません。
『人生フルーツ』は、建築家の津端修一さんと妻・英子さんの暮らしを描いたドキュメンタリーです。
派手な移住をする話ではありません。
でも、だからこそ考えさせられます。
庭で果物や野菜を育てる。
手間をかけて料理する。
季節の変化を楽しむ。
長い時間をかけて住まいを育てる。
公式サイトの言葉を借りれば、作品のテーマは「人生は、だんだん美しくなる」です。
地方へ移住したいと思うとき、つい「どこへ行くか」を考えてしまいます。
でも本当に大切なのは、どこに住むかより、そこでどんな時間を過ごすか。
この作品を見ると、そのことに気づかされます。
9.『若者は山里をめざす』

都会を出た若者は、何を求めたのか。
埼玉県東秩父村で暮らす若者たちの3年間を追ったドキュメンタリーです。
この作品が面白いのは、単に「自然が好きだから地方へ行った」という話ではないこと。
高校卒業後に東京へ出たものの、故郷へ戻ってきた女性。
東京の銀行を辞め、地域おこし協力隊として移住した男性。
都会で効率重視の仕事をするより、地元から必要とされる仕事を選んだ青年。
さまざまな理由で山里へ向かった若者たちが登場します。
しかも、東秩父村は都心から約60km。
東京から完全に切り離された場所ではありません。
東京出身の高野さんがこの村を選んだ理由の一つにも、自然の中で暮らしながら、必要なら東京へ行ける距離感が挙げられています。
これは、今の地方暮らしを考えるうえで非常に重要な視点です。
地方か都会かの二択ではなく、その間にある暮らし方もある。
そんなことを教えてくれる作品です。
▼ポイント
- 映画は、地方暮らしを想像する材料になる
- ドキュメンタリーは、実際の暮らしを知る材料になる
- 両方を見ると、地方移住を現実的に考えやすい
06 作品を観て「田舎に住みたい」と思ったら

仕事を辞めなくても地方で暮らせる時代になった
10作品を見ていると、地方へ移住する理由は人によってまったく違うことが分かります。
自然の近くで暮らしたい人。
家族との時間を増やしたい人。
都会での仕事に疑問を感じた人。
故郷へ戻りたい人。
自分に合った仕事を見つけたい人。
そして現在は、テレワークを利用して、今の仕事を続けながら地方へ移住する方法もあります。
内閣府も「転職なき移住」を地方暮らしの選択肢として紹介しています。
もちろん、会社の制度や仕事内容によって可能性は変わります。
だからこそ、最初から「移住できるか、できないか」と決めつけないことです。
まず、自分の仕事はどこまで場所に縛られているのか。
そこから考えてみてもいいでしょう。
いきなり移住せず、まずは「暮らしてみる」
映画を見て、「ここに住みたい」と思うことと、「ここで実際に生活できる」ことは別です。
旅行では分からないこともあります。
朝の交通。
スーパーまでの距離。
病院までの時間。
冬の寒さ。
地域の人との距離。
インターネット環境。
こうしたことは、実際に生活してみないと分かりません。
だから、いきなり家を買う必要はありません。
まずは数日間滞在してみる。
気になる地域を何度か訪れてみる。
テレワークが可能なら、短期間その土地で仕事をしてみる。
移住を決める前に、まず暮らしを試してみる。
そのくらい慎重でいいと思います。
最後に決めるのは「田舎か都会か」ではない
ここまで読んで、「やっぱり田舎に住みたい」と思った人もいるでしょう。
逆に、「自分には都会のほうが合っている」と思った人もいるかもしれません。
それでいいのです。
この10作品を見てほしい理由は、田舎暮らしをすすめたいからではありません。
自分にとって、本当に大切なものは何なのかを考えてほしいからです。
若いころには、都会へ行くことが正解だった。
今は、地方へ戻ることが正解かもしれない。
あるいは、都会と地方を行き来する生活が合っているかもしれない。
人生の答えは、一つではありません。
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08 まとめ|住む場所を変えると、人生は変わるのか

若いころは、都会に憧れて地方を出る。
仕事を求めて東京へ行き、便利さを求めて都会で暮らす。
それは、決して間違った選択ではありません。
けれど、結婚したり、子どもが生まれたり、仕事を続けていく中で、少しずつ価値観が変わることがあります。
昔は何もないと思っていた故郷が、今は穏やかに見える。
都会では当たり前だった便利さより、家族と過ごす時間が大切になる。
そんな変化は、年齢を重ねたからこそ生まれるものなのかもしれません。
今回紹介した作品も、地方暮らしを単純に礼賛しているわけではありません。
大変な仕事があります。
難しい人間関係があります。
多くの不便さもあります。
それでも、その土地で暮らす人たちは、それぞれの理由でそこにいます。
だから、田舎に住もうと思える作品を探しているなら、「田舎のどこが素晴らしいのか」ではなく、「自分はどんな場所で、どんな時間を過ごしたいのか」という視点で観てみてください。
もしかすると、答えは田舎にも都会にもないのかもしれません。
ただ、これまでとは違う人生の選択肢が見えてくるはず。
今回ご紹介した映画やドラマには、そんな力があると思います。
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